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梶よう子著 小説「赤い風」 - 書籍のご紹介

 

生徒さんに勧められ貸して頂いた本です。江戸時代に実施された今の三芳町と所沢市に広がる三冨新田開発の様子が生き生きと描写されています。郷土の歴史を知る、という観点で私からもお勧めします。

 

時は江戸時代 元禄年間、川越藩領内では牛馬用飼料や堆肥のための草を採取する秣場(まぐさば)で、その境界が曖昧なため、農民の村同士の諍いが絶えなかった。そんな中、枯れ草などを運んでいた大塚村の親子が鶴間村の農民に襲われ、父親が命を落としてしまう・・・。

 

時の将軍、徳川綱吉の側用人で川越藩主に就いたばかりの柳沢吉保(*1)は、かかる諍いの収拾及び農作物増産、ひいては徳川幕府内の地位を確固たるものにするため、この土地の新田開発(*2)を決意。

吉保の命を受けた家老の曾根権太夫は、嫡男、啓太郎を伴い、自ら開拓地に移り住み開発の指揮を執るが、元々、水利の悪い土地で開発は難航、入植した農民で博打に手を出す者など現れ・・・・。

 

*1 赤穂浪士討ち入りの話とかによく出てきて、TVドラマ「水戸黄門」では悪役の柳沢吉保です。

*2 原野だった三冨地域を、およそ縦700メートル、横70メートルの短冊状に区画割りし、一つの区画に「屋敷地」、「耕作地」、「平地林」を配置する。平地林の落ち葉を堆肥にして耕作地に投入し、「土」を作り続ける循環型農法を実現。この整然とした地割と景観は現代でも残されており、埼玉県指定文化財に指定されている。

 

あんまり主人公とかがはっきりしていなくて、誰に感情移入すれば良いか、ちょっとホワホワした感じもしますが、最初は百姓を見下していた家老の嫡男、啓太郎が、一緒に土にまみれ開拓をリードしていく様は感動的です。

 

ちなみに、この小説は元々、埼玉新聞の連載小説で、「赤い風」とは、当時、武蔵野台地の乾いた茶褐色の砂つぶを舞い上げていた春と冬に吹く季節風のことです。

どうぞご一読下さい。

 

(余談ですが、私は先日、川越市立博物館の「川越とサツマイモ」という企画展に行きました。「川越いも」生産の本場は、三富新田の一部、三芳町 上富ですが、「川越」と付くのは、この地がかつて川越藩の領地だったからです。)